09/6/7
■ 『訪問者/恩田陸』
- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2009/05/14
- メディア: 単行本
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ちりばめられた由来の定かでない断片的な『事実』が、その成り立ちを思い描く者に見せる、美しくもいびつな無数無限に分岐する仮想の『真実』。それはさながら覗き込む者の視点を攫い、その立ち位置を揺らがす万華鏡のように。
恩田作品にしてはスッキリまとまっていたなと思いつつ、事の本質や拭われぬ『より罪深き可能性』(犯罪の成立前提や、老人達が羽澤親子に親身になる理由)などを考察(妄想)すると、心の中にもやが残る作品だなと。
章タイトルになっている絵本の内容が、本編の暗喩的なサブテキストになっていそうな気もするのですが、その辺りの諸々も含めて誰か解説してくれぬモノだろうか。
ところで作中のプライベート・アクターな小野田氏って、既存の恩田作品にいましたっけね? どこかで見たような気がするのですが、まぁぶっちゃけいかにも『どこかで見たようなキャラ』なので、著者氏の作品の記憶ではない可能性も高いのですが。
■ 『モダンタイムス/伊坂幸太郎』
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/10/15
- メディア: 単行本
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5月の休みに読了してたのをついでに記録。
週刊漫画誌で連載されていただけあって、展開の速さとそのドライブ感、そして『待て次号!』的な吸引力はピカイチ。印象的過ぎるキャラクターの魅力も相まって、ページをめくる手が止められずに一気読みしました。
しかし核心部のネタ(謎)が中二病文学系というか…ソレはソレでいいのですが、その『謎』の彫り込みが曖昧で、それを追う人々の熱意や意思の力に釣り合う魅力を保持し続けられていなかった気が。スケールの割には小さくまとまってしまった印象を受けたのが残念です。
で、人と謎との間で翻弄される視点は結局、そのどちらにも着地出来ない場所をさまよわされるというか放り投げられるというか…うーむ、上手く言えない。
反面、そうして辿り着く、『穏やかだが忸怩たる思いも拭えぬ、決していかにもな分かり易い大団円ではない着地点』に、現実的な風情と余韻を感じもするのです。
『魔王』の延長上で、『ゴールデンスランバー』の二卵性の双生児にあたる作品のようですが、そいやこの2作にも似たような印象を受けたっけなと。
まー何だかんだ言って、著者氏の人物造形と世界を語る文章の味が大好きなので、単にそれに耽溺しているだけで満足できてしまうのですよね<割と思考停止気味の発言だが、頭ではなく感覚の嗜好で読んでいるので仕方ない<弁明になっていない。てかきちんと頭で読んでいる作品があるのか自分は?
09/6/8
■ 『弱虫ペダル/6巻』
- 作者: 渡辺航
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2009/06/08
- メディア: コミック
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心躍る憧れと、胸焦がす闘志。熱を帯びる決意が踏み込む足を加速させる。けれども垣間見える奈落の絶望に心揺らぐ…その時、それでも仲間の心の底から寄せられる全幅の信頼が自分たちの背を押し、また、それをくれた仲間の手をも引き上げるのだ。
うーわー今巻も熱いぜ! 望むものを求める強い願いは誰しも胸中で燃えさかっているけれど、用意された席は限られていて、明確な『勝負』は容赦なくそれらをふるいにかけて、ただ結果だけが勝者に微笑むんだぜ!
競争原理とその結果はいつもシンプルで残酷だ…けれどそれが全力で挑む者に刻む刻印は、優劣という価値を超え、等しく強く輝いて見えるのです。自分のように闘わないことを選んだ、本当の弱虫から見ると殊更に。
ソリャソレとして、『クライムのシンデレラ・坂道』ミーツ『登坂の王子さま・山岳』…だよなぁ、あの展開(笑)
『坂』の魅力に捕らわれた同士が互いの力量を感じ合い、その歓喜と熱を交歓しあう、『好敵手』と書きつつライバルというよりは同好の士ちうか何ちうか…前巻の運命の出逢いに続く、疾走感溢れるフラグ立てイベントが印象的でした。
闘争心が激しくぶつかり合う、今泉と鳴子の熱いライバル関係とは対照的な、坂道と山岳のライバル関係(?)がどのように変化していくのか、今後の展開を楽しみにしております<やー、でもあのふたりは以降もどこまでも爽やかに駆け抜けて行きそうだよなぁ…。