秘密 4巻/清水玲子/白泉社

秘密 4―トップ・シークレット (ジェッツコミックス)被害者が頸部を鋭利な刃物で切り裂かれる事件が続発。連続殺人の様相を呈してきた事件の捜査は『第九』へと持ち込まれる。
一見何ら共通点を持たない被害者たちだったが、彼らは同じ私鉄沿線に住み、通勤通学で同じ私鉄を利用していることが判明した。
その1週間前に発生した、電車内での薬剤師刺殺事件が切り裂き事件の根にからんでいると推測した薪と第九の面々が捜査を進めるなか、刺殺事件の犯人と目される男の変死体が発見されたことで、一連の事件は意外な方向へと枝葉を広げてゆく…。
我が身のこととして考えてみると、もしそのような現場に居合わせたら自分も『見て見ぬ振り』側に回ってしまうだろうなぁ…と。ただ、逆に罪悪感から早々に警察に出頭してあらいざらい喋ってしまいそうですが。
そんな自分にあの老婆を責める資格はないのでしょうが、それでも『善意が良いものとして、感謝と共に受け渡しされる社会の実現』というものに夢を抱いてしまうのです。
で、事件と共に時間とも戦いを余儀なくされる緊迫した展開の中、ついに青木に運命の出逢いが! 今巻の裏テーマであろう『恋情』が、ストーリーサイドと読者の視点となる青木の双方から語られる巧みな構成に感心しました。
そしてそれを受けての話なのか、特別編では意味深な薪の物語も語られており…ただ薪の話はロマンチックさよりも、彼の背負う『秘密』という名の十字架がいかなる重みを持ち、彼にどれほどの犠牲を強いているのかの方に重きがあるような気がします。
誰とも分かち合えぬ重責に単身で耐えることを余儀なくされた、寄る辺なき魂が得たただ一つの拠り所…しかしそれは彼の胸の内のみに秘められて。
その彼の心が辿り着く先に、この物語の終わりの形があるのだろうかなぁと、ふと思わされる掌編でした。