秘密 3―トップ・シークレット (ジェッツコミックス)/清水玲子/白泉社

秘密 3―トップ・シークレット (ジェッツコミックス)犯罪被害者の脳から生前の映像記憶を再現する『MRI捜査』が可能となった50年後の近未来。
左手左足が粉々に粉砕され、全身の皮を剥がれて首を落とされた惨殺死体の脳が、『MRI捜査』を行う『第九』に運び込まれた。
再現された映像記憶により、被害者が『5年前』を示唆する脅迫を受け、マスコットキャラのかぶり物を身に纏う犯人に殺害されたことを知った『第九』の面々は、同時に『5年前』に発生し露見していなかった猟奇事件の存在をも掴む。
その頃、『5年前』に被害者共々『秘密』を共有した5人の友人達は一箇所に集められ、軟禁状態で犯人から命を狙われていた。
『頭の中までは検閲できません』ってナオコさん(@百合星人)が歌ってたけど、流石に『妄想』までは実像化されないでしょうが、返す返すも恐ろしい技術だよなぁ『MRI捜査』(^^;;)
…とかいうヨタ話で緩和でもしないとやってられない、相変わらず『気持ち』ではなく『心』が重くなる作品です。特に今巻は今までで一番完成度の高い物語であるがゆえに、その重さもひとしきりで。
『犯人』が必死に隠している『秘密』については早い段階からネタが読めたので心の準備はできていたつもりだったのですが、その慟哭を目の当たりにしたらもう全然ダメでした。
涙なんか出ませんよ。ただ、もうどんどんひたすらに息苦しくなるのですよ…。
自分の中の独善的な道徳に照らし合わせると、『見殺し』を自分の意思として積極的に『選択・決定』したのに、犯人と同じ絶望的な喪失を疑似体験したのに、それでもなお「オレ達のせいじゃない」と『無関係』を主張し続けた片岡が一番罪深いと思う…というか、もっと単純に無性に腹が立つなぁと。
そして作中にえがかれた部分でも、多分その外側でも、片岡は作中の人物に対してだけでなく、恐らくその場の情動で哀しみ憤慨する『読者』に対して、分かり易く親切に『改心』してみせたりなどはしない。
まるで事件を「解決して」「フツーの人には」「全然関係ない話」とうそぶく親子と同じように、『つくりもののおはなし』として作品を消費している読み手を指さし、そこに横たわる『他人事の無関心』を無言で糾弾するように。
『きれいな想い出』として残るはずだった、でも叶わず永遠に喪われてしまった美しい光景を背景に、淡々と箇条書きにされた『その後の出来事』を見て、ふとそんなことを考えました。