電波の男よ/西炯子/小学館

電波の男(ひと)よ (フラワーコミックス)日鬱々と日々を過ごす根暗で冴えない眼鏡男の会社員・大河内。彼は学生時代に無線通話で知り合い、だがある日突然交信を断った『マリン』という名の少女が今でも忘れられない。
そんなある日、大河内が受けた社内からの間違い電話…受話器から流れ出たのは懐かしい『マリン』の声だった。
健康診断の再検査で訪れた病院で、自分を『余命3か月』と話す看護士の言葉を聞き、『マリン』を探そうと思い立った大河内が向かったのは会社の秘書室。社内で最高の美女である社長秘書の入間野さんを強引に誘い出した大河内は、『マリン』を探す手段として「モテるタイプの男になるために協力してくれ」と彼女に申し出る。
表題作他2編を収録した短編集。自己の容姿や過去にコンプレックスを抱き、寄る辺ない孤独を味わう男女がそっと寄り添う物語群だったかなと。
…しかし『冴えない眼鏡男』といっても、著者氏の絵なのでメチャメチャ格好いいよなぁ大河内。しかも変身後よりも、変身前の眼鏡姿の方が圧倒的に。
というか、主人公と同じ苗字の知人が居るため、名前を呼ばれるたびにうっかりその人物を思いだして笑ってしまう個人的な罠が(笑)
『海の満ちる音』のりえが語る『幸福の手法』については、自分も同じような意識でもって人生をやりくりしているので非常に共感を覚えました。
ただ、彼女がそれによる虚無や喪失感に胸を痛めながらも理性的に生きているのに対し、自分には彼女のようなしなやかさはないので、それを忘却という形で贖っているのが決定的に違う点だったりしますが。
だからこそ、「幸せか?」と問われて曖昧な答えを返しながらも彼に寄り添うりえの優しさと強さには、憧れを抱かずにはおられません。