ARIA 12巻/天野こずえ/マッグガーデン

ARIA(12) (BLADE COMICS)アクアマリン…それは遙かなる蒼。航海を守る海の女神。
果てしなく広がる海で満たされた水の惑星・アクア。人々の活気を呑み込みながらもどこかまどろむように佇む都市、ネオ・ヴェネツィアで、『水先案内人』として『一人前』となることを目指して、共に歩んできた3人の少女たち。
今、あまたの出逢いと試練を越えて、幾年の鍛錬は花開き、夢見た願いが実を結ぶ。
…でもそれは、固く繋がれた彼女たちの手をほどき、共にした航路を分かつ旅立ちでもあった。
けれど知っている。繋いだ手が離れたとしても、残された温もりは消えないことを。たとえ道は違っても、歩み続ける限りそれは何度でも交わるのだと。
手にした夢の先に広がる、もっとずっと新しい明日の先で…きっと。
一喜一憂しつつ、ありふれた日常の中からいくつもの幸せを取り出して、いつも嬉しそうに見せてくれた灯里や藍華やアリスたち。人と世界の優しさ、そのひたむきさと美しさに心癒された作品でした。
かつて灯里がアリシアと共にした『AQUA』での初めての朝…少し大人になり、迎えられた側から迎える側となった、成長した灯里が再現した『始まりの食卓』の情景が、何とも感慨深く胸に染み入る幕引きでした。
完結はしたのですが、この作品は箱に入れてしまわずに、本棚に置いて時々読み返す作品になるだろうなぁ。素晴らしい物語をありがとうございました…と著者氏に御礼申し上げたく思います。
しかしアリシアさん…常々「私生活が謎だよな」と思ってはいたのですが、最後の最後まで謎のままでしたな。寿退社とか言われても、正直ピンとこないしなぁ。(恐らくあえてはっきりとえがいていないのでしょうが)
そういう生々しさを持ち込まない(えがかれない)、浮世離れした所が最大の魅力だったのだなぁとか、改めて思ったりもしました。
そいやアリア社長が待っていたものは何だったのか、どうなったのか、今も待ち続けているのだろうか…そんなことに思いを馳せつつ、著者氏の次回作を待ってみたいなと思います。