亀の鳴く声/西炯子/小学館

亀の鳴く声 (フラワーコミックス)地味な市役所職員の中川は、趣味で描いた少女マンガを投稿する勇気を持てず、ひとりファミレスで袋に入れた原稿を前に溜息をつく日々を送っていた。
だが店で見かける美少女高校生・くれはの喫煙をいさめたことから彼女に原稿を見られ、感動したくれはに強引に手を引かれてあれよという間に東京の出版社へ持ち込みにいくハメに。
作品の評価は上々で、編集者はすぐにでも雑誌に掲載したいと言うが、編集者が「よろしくね!」と手を取ったのは、何と中川ではなくくれはの方だった!?
内気なメガネ公務員とワケあり美少女を軸に、心にヒビを入れるいくつもの寂しさと、小さいけれど確かな慰めをえがいた作品。
繰り返しの日常に空いた小さな風穴、出逢いが呼び込んだ微かな追い風を一杯に受けて、誰もが少しずつ前へと進んでゆく。
形は違えど誰もが感じる孤独を淡々と、けれど丹念に描写したあとだからこそ、出来過ぎたロマンスと大団円にも納得がゆこうというものかと…いや、何かこじつけたりとかは置いといて、やっぱりそーいうのが好きなんだよなぁ自分。