美しいこと/橋本みつる/新書館

美しいこと (ウィングス・コミックス)

美しいこと (ウィングス・コミックス)

周りの人たちが当たり前のように口にする言葉が、みなこには上辺だけのものに思えて仕方がない。本当の本当に、誰が見ても文句が言えない様な、凄く綺麗なものがあれば、そればっかり見て、それを信じて暮らすのに…。
そんなある日、みなこのクラスに転校してきたのは、昔TVによく出ていた超能力少年の夜居。『フツー見れないもんとか見れる』と言われた彼に、みなこは縋るように思いをぶつけた。
必死の彼女に『凄く綺麗なもの』を見せるため、夜居が取った驚くべき行為とその果てに…みなこがそこに見たものとは。
『みんな』が口にする『何処かで聞いた様な言葉』。
上辺のみでただ空気を振るわすだけのような、陳腐で空疎に思えるそれが、どうして『たくさんの人が口にする言葉』であるのか?
みなこがそのことの意味ではなく在り様と、ぶつかって傷ついて、その端を少し抱きしめられるようになれたこと。
その時に砕けたいくつもの、彼女の『破片』が痛々しくも眩しく思える一編でした。そして砕けずに残ったものの輝きにも、また目をすがめてしまうのです。