10/2/25〜2/28

■ 『非怪奇前線』

非怪奇前線 (ウィングス・コミックス)

非怪奇前線 (ウィングス・コミックス)

「誰かを全力で守るって」
「本当に死にもの狂いで頑張って守るって」
「可能だと思う?」
明らかに『異常』な出来事を前にして、それでも蟹喰は、ソレを『どこにでもあるもの』なのだと言う。
この物語を「『怪奇』ではない」という著者氏のえがきだす残酷な、ただ「そうである」としか言えない『世界の理』は、確かに「そうなのかもしれない」という説得力を帯びて、そのやりきれぬ哀しさを『事実』の如く読み手の心に刻む。
だがワタナベは、因果も理由もないから解決法さえ分からぬその怖ろしい『現象』へ、何の力も持たずに心ひとつで立ち向かう事を決めた。
愚かで無謀な彼の、けれど胸に抱くあまりに純粋な愛情…著者氏の物語は、いつでもそうやって無様に闘う不器用な人たちの、脆くて強い姿を鮮やかに見せてくれる。
そんな彼らの姿を通して、「ただそのように在る、そのようにしか在りえない『環境』という『状態』に、『世界』という名を冠ずる事ができるのは、その中で喜びや苦しみを携えてそれと向かい合う人間だけなのだ」とでもいうように。
のちにワタナベへと届いたメッセージ。それはワタナベだけでなく、まるで読み手をも励ますようなものでした。
もがきあがき失ったり手にしたり。それでも『生きている』彼らの姿が、何よりの福音であるのだと語るような…綴られたのは絶望だけでなく、それすら越える尊い力もここに、確かにあるのだと。囁くような小さな声で、それを教えてくれているような気になるのです(<割と電波受信系なw)
きっと、ずっと、何かの折に触れ、思い出すたびに何度でも読み返すであろう作品です。箱に収納できない1冊が、また本棚に増えました。

■ 『魔法使いの娘/8巻』
魔法使いの娘 (8) (ウィングス・コミックス)

魔法使いの娘 (8) (ウィングス・コミックス)

実の父母を殺したのがパパだと知り、混乱のままその元から逃げ出した初音。けれど自分自身と、そしてパパとの絆を見直した時に、彼女はパパと真っ正面からぶつかる事を選ぶ……のだが、そんな子の心、親知らず。肝心のパパは『鈴の木流は初音に継がせる』と一方的に言い逃げて、姿を隠してしまった。
怒り心頭の初音ちゃんは、パパと再会できるのか!?
誰より強くて、でも誰より臆病でずぼらなパパと、その尻を叩かざるを得ない『娘』。
そんなふたりが今まで積み上げてきた生活と、互いへと寄せた想い。
いい部分も悪い部分も含めて、それでもどうしようもなく愛おしいその全て。
これまでのあらゆる経緯を凝縮した『最後の難題』と、ソレに対して初音ちゃんが選んだ『解法』のかたちが、絶妙の匙加減で『収まるべき場所に収まった』と感じられる、総決算の終幕でした。
というワケで、ひとまず完結。読み進めて終盤に至り、「アレ?回収しきってない伏線とかエピソードは?」と思っていたら、新たなステージでまた物語が綴られるとの事で、今から初音ちゃんの新たなる活躍が楽しみでなりません。
という新作への期待はさておき。『魔法使いの娘』として今在る自分と向かい合い、偽りのない素直な気持ちと怒りをパパにぶつけてなお、パパを抱きしめた初音ちゃん…その頑張りと旅立ちに大きな拍手を贈りたいです。
…この先、まだまだ苦労しそうですしねぇ?(^^;;)

■ 『ひらひらひゅ〜ん/3巻』
ひらひらひゅ〜ん (3) (WINGS COMICS)

ひらひらひゅ〜ん (3) (WINGS COMICS)

敗北の苦さを身に染みて知り、望む『勝利』を掴もうと決意する開開高校弓道部の面々は、実力向上のために夏期合宿へと突入。けれど勝利への強すぎる執着が、仲間の間に温度差と不協和音を生んでいき…。
部員各々の気持ちが交錯しつつすれ違い、それぞれの想いが小さな事件の中で解け合い混じり合う。うーん、全力投球で青春ド真ん中! 今巻もまた、甘酸っぱくてちょっと泣けて、誰もかもの在り様に愛おしさの募る物語です。
智和の不器用ちうか小学生スピリット溢れ過ぎな初恋物語も、どうにもヤキモキしつつあまりに爽やかな初々しさでたまらぬのですよ。まばゆい!まばゆ過ぎるっ!!<床をゴロゴロと転がりつつ身もだえ

■ 『ケロロ軍曹/20巻』映画版2作目のエピソードを、著者氏自らの手でコミカライズした最新刊。
アニメ版との違いを比較してみたいのですが、観たはずの内容をボンヤリとしか思い出せぬ罠(記憶力薄弱)
大筋の語りの傍らでさりげなくも細やかに描写されている、キャラクターそれぞれのやりとりや所作が上手いよなぁと、改めて感心させられたり。
特に好きだったのは、クルルとモアちゃんのコンビネーションでしたなー。
まるで『小娘ちゃん』とからかう如く、モアちゃんを「アンゴルちゃん」と呼んで軽口を叩いていたクルルが、プライドを賭けたここ一番の大勝負時には、彼女を「モア!」と呼んで、パートナーとして全幅の信頼を預けている(とか言うと「何言ってやがるんだ…クーックック」とか返されそうですが)…そんな様子とっ、かっ、がっ、ね〜〜〜っ! もー燃え&萌えてたまらんのですよ!!
夏美ちゃんのピュアで健康的なのになまめかしい姿(特に一糸まとわずシャチに乗りまどろむ姿とか!)や、普段はあまり見られない『不安そうな表情や仕草』にもときめかされました。
「帰ろう」という、懐かしく切なくも温かい一言へと収束してゆく終わりの情景も素敵でした。
20巻を越えても衰えぬ面白さ。これからも末永く、ステキオモロい作品を創作されますようにと願っております。

■ 『真月譚 月姫/7巻』
真月譚月姫 (7) (電撃コミックス)

真月譚月姫 (7) (電撃コミックス)

『殺した男』と『殺された女』。苛烈な道程の果てにそれぞれが内に秘めたものを見つめ合い、ようやく互いの本当の心と願いを結び通わせた志貴とアルク
だが、この上ない至福の時間は、故にこそ、ふたりを引き裂く決定的な理由となった…。
自分の気持ちが『恋』なのだと気付き、その情動が『愛』だと知ったアルクの表情や態度。その全てが美しく愛らしく、それらが醸し出す『固有結界』には、読んでいるこちらも少女漫画的なリリカルでラヴの気持ちに汚染されてしまいました…ぬあ、「真のヒロインは琥珀さんだ!」主義者の自分が、まんまとたぶらかされちまったぜ! 流石な正統ヒロインの実力だッ!!!
著者氏の作画と語りで『琥珀ルート』もマンガ化されぬだろうかなぁと切望するのですが…叶わぬでしょうかねぇ?
あと、完全にかませ犬ポジションにハマってしまったシエル先輩(心のヒロイン)の救済ルートも希望(^^;;)