2004/7/22

鋼の錬金術師 8巻/荒川弘スクウェアエニックス
帯の『宮部みゆき氏大絶賛』という言葉に…というか、その扱いにビミョ〜な違和感を覚えたのは己だけですかね?宮部氏のネームバリューが大きい割には、ソレを売りにするワケでもなさげな扱い(取って付けたような加え方)に、どうも座りの悪を感じてしまうのですよな。何というか…『今更感』が漂うカンジで。
とかいう周辺事情はともかく、『薄氷一枚下は地獄』とまでは言わぬものの、『戸板一枚分程度の厚さの足場の更に下には、底知れぬ深い暗がりが口を広げている』ような状態での笑える小ネタというのは、一歩間違うとかなり滑りやすいモノだと思うのですが、著者氏はこの辺を上手くクリアするギャグをもって総体的なバランスを取っているよなぁと改めて感心させられた今巻。
連綿と続く伏線に加え、新キャラが持ち込んだ新たなる設定や『外の世界』という概念にも心惹かれますよ。飽きさせないなぁ。そんなあくまでエンターテイメントな視点と表現を失わぬ点でも凄い作品だと思い。つ〜か巻末4コマが笑えすぎますて<微妙新潟弁(笑)
ところで『鎧で肉を焼く』というシチュエーションには何かを思い出すのですが…何だっけなぁ?車のボンネットだったか石の上だったかで目玉焼きを焼くCMを昔見た記憶があるのですが、ソレではなくて他の何かで…う〜ん?
罪と罰鈴木有布子新書館
荒川弘氏の推薦コメント帯付きで刊行された1冊。コレに限らず、この手の『出版社の枠を越えた推薦』というのは、作家間での私的な繋がりによる賜物なのでしょうかね?そんな些細な疑問。
隆盛からの没落という歴史を持ち、現在は諸問題を抱えながらもごく一般的な住まいとなった旧家。その家には開かずの間があり、そこには神が籠もっていると伝えられている。父の借金により陥った窮状を救わんと、その開かずの間を200年ぶりに開け放った時、主人公がそこに見たのは…とかいう話。
『(架空の)優しい人が織りなす、人に優しい物語』というのは簡単そうに見えて、実はちょっとしたセリフ回しや、人物と状況とそれへの対処のえがき方によって容易く底(物語を恣意的に『いい話』へと取り回そうとする、現実にいる作り手側の思惑やその存在)が透けて見えて醒めてしまうという高い壁がある(その事に気付いているのかいないのかはともかく、ソコで失敗する作品は掃いて捨てる程ある)と思うのですが、この作品は読後まで、そんな意地の悪い視点を忘れさせるような物語を読ませてくれました。
本当はどこにもいないのだけれど、すぐそこにいて、息をして、手に触れたらきっと暖かいのだろうと思わせてくれるような人達の姿に、何やら心が温められてしまいました。
著者氏の創作物は今後もチェックしていきたいと思います。