2004/9/24

フィラメント/漆原友紀講談社
蟲師』の著者氏の短編作品集。大半は以前ラポート社から刊行された『バイオ・ルミネッセンス』からの抜粋・再編集作だったりしますが、2作ですが近年の作品も収録されているので購入。まぁ『蟲師』の原形となる旧作を読み返したいと思っていたので(ラポート版を持っているのですが、例によって容易に取り出せない場所にある…)丁度良かったかもなと思い(^^;;)
曖昧模糊として、どこか雲を食む(はむ)ような感覚を覚える数々の旧作は、現在の著者氏の力量(表現力)には及ばぬものの、地に落ちた水が染み入るようなゆるりとした感傷と、微かに目をすがめるようなまぶしさに満ちています。午睡のまどろみを思い出すような作品世界がとても好きです。
いばらの王 4巻/岩原裕二エンターブレイン
閉じられた古城でおぞましい生き物による暴虐に抗うと共に、時間経過で体を蝕む石化の奇病とも闘わねばならない主人公達。「何故!?」と問いながら生きるために戦い続ける彼らと、そして読み手の前に、全ての始まりが今明かされる。
どこから何が始まったのか。それを知ったカスミの前には、より残酷な絶望と共に希望が、そして更なる謎が立ち塞がる…う〜お〜!面白ぇ〜!謎の提示と開示の仕方が非常にドラマチックで、サバイバルアクションがそれをより引き立てているのですよ。あとメガネが萌えを完全サポート!<え?
そろそろクライマックスを迎える(恐らく次巻が最終巻?)物語の続きがとにかく気にかかります。次巻刊行が待ち遠しいですよ。
トランジスタにヴィーナス 7巻/竹本泉
『女神』の異名を持つ連合政府の美人スパイ、エイプリル・イーナスの冒険もついに完結…と言っても、まぁいつものようにドタバタの事件が起こり、いつものように成り行きで展開してほにゃりと終わっていたり。というワケで今ひとつクライマックス感には欠けますが、これが著者氏の作風であり、そこが好きなので特に問題もなく(笑)
毎回ゲストが美少女三昧で、変な宇宙人(このデザインがまた好きだったのですよな)がてんこもりだったこの作品はかなり好きだったので、これでおしまいかと思うととても寂しいです。著者氏のえがく古き良きSFのテイストは非常にツボなので、この手のジャンルを扱う作品をまた是非描いて頂きたいです。
少年魔法士 12巻/なるしまゆり新書館
いまだその真意を明かさぬ人王アークの招聘に応えて集った能力者達が、その手を勇吹とカルノへと伸ばす。全容は見えぬままで転戦を続けながら、それでも彼らは少しづつ、取り巻く世界と自身の秘密へと歩み寄っていく。
いやもうこの物語世界の成り立ち方に、そして決して優しくはないその場所で立ち上がって(それがどのような方向にであれ)歩む人達の在り様には幾度と無く驚かされますよ。何度俯いて足を止めようと、何度でも振り仰いで進もうとする彼らそれぞれの辿る道と行く末を、彼らの意志が全うされる事を願いながら見ていきたいと思います。
しかし巻末の『あんまり少年じゃない人もいる魔法士』には本気で笑わせて頂きました。著者氏の笑いのセンスと着想が非常にツボです。勇吹には是非あの方面の神となって頂き、彼の願うモノを生み出して頂きたいものです。ご相伴に預かりたい!(笑)
Under the Rose 2巻/船戸明里幻冬社
愛を請い願う心が、それを認めまいとする心が、相克する想いがいくつものすれ違いと悲しみを生み出す。けれども、だから、人は人を求め、不器用で寂しい心を寄り添わせる様に触れ合おうとするのだろうか。
「冬の物語」編、完結。庶子ライナスの物語は、彼の人生が続いていくであろう様に尾を引きながらも幕を下ろし、焦点は彼から家庭教師のレイチェルへと移る。しかしここで語られる物語は、彼女というフィルターを通したロウランド家の正妻であるアンナとその息子のウィリアムの関係なのだろうなぁと。ただでさえ複雑で繊細な物語世界にあって、更に誠実で潔癖なレイチェルがこの先どのような辛い思いをするのかを考えると遠い目になってしまいますが、それでも彼女が、そしてアンナやウィリアムが何を手放し何を掴むのか…それが幾ばくかでも明るいものである事を祈る様にして、続巻を待とうと思います。
ソリャソレとして、巻末描き下ろしおまけ漫画の「マーガレットさん」が非常に萌えますよ。少女マーガレットさんの七転八倒ぶりもさながら、グレースのいぢわるっぷりがもう…あなたの方こそ可愛いですよと(笑) 1本丸々あのほのぼのノリの話なんかも読んでみたいですね。