2004/12/1

ナツノクモ 3巻/篠房六郎集英社
『うそつきおおかみ』編完結。架空の現実から接続する架空のオンラインゲーム世界で、それでもそこに在りいびつに濃縮された、だが細くも希薄と言い切れはしない『人の在りようと繋がり』を守るための戦い。そこには『人の手が(直接にではなくとも)触れる場所には人の意志が、時にはその実在以上のリアルさで顕現するのではないか』という残酷で美しく、だが力強い幻想や願いが込められているのではないかと感じさせられます。
『動物園』がらみの謎やエピソードはまだ伏線を消化しきっていないようなので、今後の成り行きが楽しみです。
ナンバーファイブ 7巻/松本大洋小学館
この作品には整合性も秩序も期待してはいなかったのですが…それにしてもパパの言動の支離滅裂っぷりには、電波一歩手前のマイクよりも目眩がします。しかしそんなパパや、「自分の意志で」と行動したマイクの抱いた『愛』について思いを馳せると、とりとめもない不安感や悲しみを覚えると同時に、心の深い場所が非常に惹かれてしまうのです。
次巻はいよいよ最終巻。この物語はどのように、そしてどこへと辿り着くのでしょうか。その幕引きを、今はただ待ちながら。
潔く柔く 1巻/いくえみ綾集英社
前後編構成で2話収録。著者氏の作品は、やはり長編よりも中or短編が好きだなぁと再認識した作品集です。
通学電車の痴漢に悩み、自分を好きな人と、自分が好きな人への気持ちの狭間で揺れる少女。いつでも側にいた心地良い人達とのすれ違いや別離を経験して、一度は全てを失いかけながらも、それでもその先にともる灯りを見る少女。どこかにありそうな話の、でもきっとここにしかない切り取られたその瞬間と気持ち。
無条件の円満さではなくとも、いつでも人が人に寄せる気持ちの暖かさが感じられるいくえみ作品は、自分には非常に心地良いのです。