2005/9/15

■ 『奇遇/山口雅也

奇偶 (講談社ノベルス)

奇偶 (講談社ノベルス)

『「作家は書かなければならないのです。たとえ、片目を失う不条理に遭っても、求めて求めた果てに、世界に《意味》などなかったとしても……」』
「どっか(というか他の本)で読んだなコレ」というような、物理学・数学・神学・哲学・文学・民俗学・心理学などの大量の学術ネタを、『偶然』というキーワードの糸によってパッチワークのように縫い繋げ、一枚布の絵として現出させた物語。
ネタの繋げ方やシーンごとの印象的なエピソードは面白く、それなりに楽しめたので購読した事は後悔していませんが、厚さの割には食い足りないというか、広げた風呂敷がデカかった割にオチが凡庸だなというか。
あと、モチーフとして採り上げられた学術ネタに、「ここ十数年位の間に流行っていた時期があった(そして過ぎた)ような?」という『今更感』を拭えぬモノが多かった気が。
最たる所でユング量子力学。研究や勉強でもっと突き詰めて向き合うならば別でしょうが、『小説のネタ』として『おいしい所取り』的に披露されているのを見ると、「あ〜、多分ある程度の数とジャンルの本を読む奴だったら、青春期に一度は洗礼済みだよな、この辺のネタは」という印象を抱いてしまい、少々興ざめもしてしまったり<まぁコレは、かつてその辺りのネタにカブレた側としての偏った認識ですが(笑)