2005/10/5

夏目友人帳 (1) (花とゆめCOMICS)夏目友人帳 1巻/緑川ゆき白泉社
産まれて間もなく両親を亡くし、また、人が『妖怪』と呼ぶ存在が見えてしまうという『秘密』を抱く事によって孤独に生きてきた夏目少年。
ようやく安らげる場所を得て、自身が持つ『秘密』を隠して生きようとする夏目少年だったが、彼と同じ力を持っていた祖母レイコの『遺品』を所有するがために、彼は妖怪達から狙われるようになる。
夏目少年を襲う妖怪達が「返せ!」と口にする『友人帳』…それは祖母が妖怪達と交わした契約書。名を記す事で、その妖怪を統べる力を持った帳面であった。
力を望まず災いを退けようとする夏目少年は、帳面の力を目当てに契約した用心棒であるニャンコ先生と共に、帳面に記された名を妖怪たちに返すべく奮闘する事になっる。
これは時に心を通わせ、時に命を脅かされながら続く、夏目少年と妖怪の織りなす、平穏から半歩向こう側の日常模様。
『緋色の椅子』の完結からしばらくぶりの新作は、1話完結連作の不可思議な物語。
人ならざるものでありながらも『人が在るがゆえ』の存在である『妖怪』と、人でありながら隔世を垣間見る事で人の世からはみ出がちな夏目少年。
全く異なる存在でありながらも、共に『狭間の存在』である彼らの交流。触れながらも合わさる事のない彼らの心の在り様と、だがそれでも彼らに伝わり合う熱のようなモノ。
それは架空の存在である両者から、更に隔てられた読み手側にまで伝わってくる気がします。
つ〜か、通勤電車で読んでいたら、何度もこぼれそうになる涙を堪えるのが大変でしたよ。特に4話のラスト。
何というか…『優しい』のではなく、『優しくあろうとする』夏目少年の心持ちだとか、それが形として表れる行動だとか。
著者氏のえがく『優しさ』とは…何と暖かく誠実で、何と寂しき事なのか。
寄りそう寂しい心が生んだ小さな温もりの、何と熱く儚き事か。
ちっとも纏まらない感想だなぁ…というか、初手から纏めようとかいう努力を放棄しているというか。
自らにであれ人からにであれ、いい歳した見栄っ張りの大人が泣く事に、理由なんか付けたくないし、付けられたくはないのです。
…なので、やたら『泣き』を強調する帯の売り文句が気に障るというか…そういう辺りはまだまだ自分も子供っぽいよなと苦笑しつつ(^^;;)