/薄荷廃園の主人と執事。 (あすかコミックスDX)なるしまゆり/角川書店

薄荷廃園の主人と執事。 (あすかコミックスDX)教育施設から脱走して窃盗によって生計を立てていた城ヶ崎は、施設で相棒だった帯刀に脅されて政治家の邸宅から汚職書類を盗み出すことを強要される。
厳しい警備が敷かれた邸宅への侵入を控えて城ヶ崎が思い出したのは、以前入り込んだ薄荷公路邸で出逢った「坊ちゃん」。
彼の眼前で煙のように消えた「坊ちゃん」の秘密が侵入の助けになると考え薄荷邸を再訪した城ヶ崎に、「秘密を知りたければ、君の命の誇りを示せ」と「坊ちゃん」は告げる。
寂れた屋敷で「ごっこ遊び」のように執事として振る舞う城ヶ崎が見た『夢の結晶』…そして彼が示した『誇り』に応えた、「坊ちゃん」の『秘密』とは?
本筋である1〜3話も良かったのですが、『その後』的な第4話がとても良かったです。というかチロちゃん。『愛されて真っ直ぐ育った子の弱さと強さ』が、読んでいて愛おしくて仕方がないのです。そう、私は『育ちのいい子』が大好き。
彼女は頭で『誇り』なんて難しいものについて考えたことなんてなくっても、その胸では『誇り』を抱くことの本当に大切な意味なら知っている。水を吸ってすくすく育ったら、あとはつぼみを付けて花開くのを待てばいいだけなのですよ…って、何言ってんだろうなぁ(^^;;)
数限りなく味わう不遇と試練にも歪まなかった城ヶ崎の強さも、甘やかされて育った自分を卑下せずに与えられた愛を真っ直ぐに受けとめられるチロちゃんの強さも、どちらの『誇り』もきっと、より美しい輝きを「坊ちゃん」に与えるのではないかと思います。
1冊完結としてもの凄くまとまった作品なのですが、これっきりというのも惜しい世界観で、続編を読んでみたいですよ。