おやすみプンプン 1巻/浅野にいお/小学館

おやすみプンプン 1 (ヤングサンデーコミックス)プンプンは小学生5年生。どこにでもいる男の子。けれどプンプンが転校生の愛子ちゃんに一目惚れをした次の朝、お父さんがお母さんに取り返しの付かない暴力を振るった。
蒸発したお父さんと、入院したお母さん。ひとり残されたプンプンを心配してやってきた雄一おじさんと暮らし始めたプンプンの日々は、変わらず続くようでいて少しずつ違う貌を見せ始めていた。
そんなある日、道で拾ったHなビデオを観賞しようと集まったプンプンと友達たちは、そこに上書きされていた見知らぬ男による家族殺しの告白を見てしまう。
ただのいたずらだと思った…けれどソレは…?
「誰だって生きてる限りご苦労ばかりじゃないすか。その定めだけは誰しも平等に逃れられませんよ。」
大人だけじゃない。子供だって、子供だから大変なんだ。
三面記事にすらならぬ『事件』に満ちた日常の、それなりにワケアリだがありふれた二束三文の『悲劇』。しかしその悲しみを、誰が笑えるものなのか?
『それが重荷であるならば、背負わずともよい』…とはいえ、重荷を捨てるには相応の知能と経験と財力が必要であり、手段を持たぬ子供がそれを成すのは困難である。
まして、子供であるが故に味わう苦難に頭を悩ませつつも、翻弄される我が身とその理由を深く識(し)るにまで至らぬ純粋で幼さなき存在ならばなお。
プンプンだけでなく作中の子供たちの、縋るべき力強い存在を失い、だがそれでも頼りない足で必死に歩こうとする健気さとやるせなさ。それが読み手の胸を痛める。
「どうか清濁で織り重ねらられ、塗り込められられる混沌とした彼らの『世界』が、あとほんの少しでも彼らにとって優しいものとなりますように」…と、ただ眺めるだけの存在ができるのは、ひたすらにそれを願いながら、彼らの姿を目で追うだけことだけです。
あと、『ず〜〜っと』と幸せを強要する愛子ちゃんに対して「恐い。」と感じた(らしい)プンプンの、純朴で生々しい情動が印象的だったなぁ…という私的メモ。