シシ12か月／わかつきめぐみ／白泉社

小さなもののけのシシは、酔っ払って寝ているスキに社をつぶされ学校を建てられてしまうような、うっかりで鉄火肌（？）な土地神さまの所に住んでいる。これはそんな土地神さまに仕える気のいい従者たちと、時に奇妙な客人を迎えて過ごす、シシと季節の折々の物語。
浮世離れした存在が謳う、現代生活の中で忘れられがちな風情と情緒。それは日本的でありながらも異世界を感じさせ、けれども私たちがよく知る他愛のない『日常』の喜びに満ちている。
悲喜こもごもを浮かべて日々はただ先へ先へと流れてゆく。その大きな流れから取り残されたものを、水底深くに呑み込みながら。
とかいうご託はさておき、わかつき的造形の愛らしさと、柔らかな描線の心地よさにひたれる1冊でした。この辺の土地神さまシリーズの話はまた読んでみたいものです。