ぼくらの 8巻/鬼頭莫宏/小学館

ぼくらの 8 (IKKI COMIX)パイロットとして責務を果たし、そしてその行動と宣言をもって『世論』という名の社会を仲間への追い風へと傾け、アンコは敬愛する父の胸で息絶えた。
次なるパイロットに選ばれたのはカンジ。彼は沖天楼…母が設計し、母を自殺へと追いつめた、欠陥を抱える巨大建築物がそびえる場所を死地と決めて戦いへと挑むが、攻撃を仕掛ける敵は遥か彼方、日本政府の介入を拒むアメリカの地にあった。
軍人として、そして個人としての誇りと覚悟。たった一つの命を燃やし尽くしても成すべき、守るべきものを自己の中に抱いた時、人はこれほど気高くなれるものなのか。
「もし自分が…」と我が身に置き換えてみようとしても、守るべきものも持たず怠惰で甘美な日常を貪る自分には、正直予想も見当もつかない『献身』。それを単に美しいとか哀しいとか言葉にするのははばかられるのですが、それでも彼らがただ『死ぬため』ではなく、『生かす、そして生きるため』に戦ったのだと…そしてそれをとても尊いものだと思ったことだけは、記しておこうと思いました。