3月のライオン 1巻／羽海野チカ／白泉社

17歳の零はプロの将棋棋士。幼い頃に事故で家族と死に別れ、引き取られた棋士の家も出て、東京の下町で独り生きる孤独な少年は、将棋の中にだけ自分の居場所を見出していた。けれどある時、近所で慎ましく暮らすあかり・ひなた・モモの三姉妹と出会い、さしのべられる手に触れた時から、彼の生活は少しづつ変わってゆく…。
『ハチミツとクローバー』でおなじみの著者氏による新作が開幕。
巻末エッセイマンガで本人が語るように「何故この題材？」と思ったのですが、蓋を開けたら暖かく面白く、そして寂しく、けれど温もるいつもの著者氏の作品でした。
『関わる人たちと苦楽を共にすることはできても、戦う時はいつも1人で、その相手は結局自分だから、背負う孤独は誰とも分かち合えない』という種の『道』で生きる人の煩悶や葛藤と寂寥、そして克己や癒しをえがいているという点では『ハチクロ』に通じるものがあるなぁとか。
とかまぁ小難しいごたくはさておき、将棋を知らずとも物語に引き込んでくれる、登場人物達の魅力的な描写は流石の一言。重くなりがちな雰囲気を緩和する、幕間のコミカルなエピソードもいい感じです。
今後は確執を残したままっぽい引取先の棋士の娘との関係にも触れられそうなので、キャラ達の活躍だけでなく物語的な先行きにも興味を惹かれております。タイトルがどこから来ているのかもいずれ分かるのだろうかなと？
また新たに刊行を心待ちにできる作品と出逢えたことを嬉しく思います＜溢れた本棚から目を背けつつ…