蟲師 9巻/漆原友紀/講談社

蟲師(9) (アフタヌーンKC)蟲を視て寄せてしまうという、望まぬのに備わった能力…どんなに忌避しようとも、自己の中に厳然として在る『認めがたい何か』。
それに翻弄される自分を忌みつつも、それと向かい合い、その先に少年が掴み取ったものとは…。
3巻の『眇の魚』、4巻の『草を踏む音』から続く、少年・ギンコが『蟲師』へと至った道程をえがく『草の菌』。
「この世に、居てはならない場所など誰にも無い」というスグロの一言が、寄る辺なくさまようことを宿命づけられたギンコにとってどれだけの救いとなったのかを想うと、言葉にならぬ寂寥と同時に、そこに深く染み入る熱を感じて目頭が熱くなります。
『どこか』に居場所を定めることができずとも、どこにでも『在る』ことを許されている。世界はその広さをもって寛容と成し、訪れる全てを受け入れる…あ〜、またまとまらなくなってきた(^^;;)
『願う理想』や『望む環境』が得られない時、そこに在る自分をどのように見据え、その現実をどのように渡ってゆくのか…『風巻き立つ』にもまた、その答えのひとつがえがかれているように思います。
『蟲』の存在が浮き彫りにする、人が負う『運命』と『試練』。その海原を漕ぎ渡る蟲師・ギンコの漂泊の記録はどこへと辿り着くのか。
物語を手に取るたび、作品世界の深淵に思いを馳せずにはおられません。