草の上 星の下/谷川史子/集英社

草の上 星の下 (クイーンズコミックス)お姫様みたいに綺麗で優しいお姉ちゃんは、結婚してスイスに行った。大好きだったけど、いなくなってほっとしてしまった自分…それから10年後。そんなわだかまりを朝子が忘れかけていた頃、姉の美宵子が突然帰国した。嫉妬と羨望…長い間蓋をしていた姉への気持ちと向かい合った朝子の心は揺れ動く。
姉と妹、年上の夫と若き妻、先生と生徒、父と娘。そんな関係の中で愛する人を挟んで揺れ動く心は、近くて遠くて、時に離れて…でも気付けば寄り添っていて、涙すらも暖かく。
関係性の立脚具合だけを見ると生々しく、うっかりすると容易く泥沼になりそうなシチュエーションなのに、その一見嘘くささ(失礼)を意識させずにあくまでほのぼのと優しく描く著者氏の作風に、改めてその力量を凄いと感じさせられました。嫉妬も劣等感も孤独も羨望も、確かにそこにあるのに、決して醜くはない。そのことに安堵と勇気を貰える気持ちです。
…いや、そんなうがった見方や狭い了見など屑籠に捨てて、素直に心に染み入ってくる短編集です。
ところで貴和子先生の担当編集な『ヨモギ田君』は、『積極』と『ホームメイド』に出てきた『鳶田君』とは別人なのでしょうか? とかいう疑問。