09/1/9

■ 『7SEEDS/14巻』

7SEEDS 14 (フラワーコミックスアルファ)

7SEEDS 14 (フラワーコミックスアルファ)

苛烈な試練を越えた自負と、そのために犠牲にしたものの重さに傷を抱える夏のAチーム。ただ生き残ることだけ見据え、『何のために』という持続動力を失ってしまったかのような彼らに、ただ『生き残ってしまった』ように見えるのに花たちの、だが活き活きとした姿が何を見せるのか…。
安居のヒステリックなナーバスさに危機感が募る傍ら、ハルと小瑠璃、くるみと鷭など、心を通わせ互いに新しい何かを見つめ直す人々の姿に安堵もしたり。
しかし花の持つナイフ…ひいては彼女の出自が新たな悲劇を生みそうな展開が心配ですよ。いずれはきっと分かり合えると信じてはいますが…いつどこを読んでもハラハラさせられ、そして登場人物達の強さにも弱さにも心惹かれる作品です。
過去と経てきた闘争、そしてその傷跡が人の在り様を作るとして、生命力の戦いを声高に叫んだ安居に対し、精神力の戦いを静かに熱く語った秋ヲ。
それはどちらが重い軽いではなく、双方が厳しい戦いであり、それを戦ったことこそが尊いのではないか…と、まぁ戦わずに生きている自分が言うのはおこがましいですが、だからこそ、安居が『どちらがより』という比較の価値観の外に目を向けられるように、それを支柱に自分を立たせている依存状態から抜け出せられればいいなと願うわけで。
とりあえずいきなりみんなは無理でも、早く小瑠璃の笑顔が見られるといいなぁと。実れ小さな恋のメロディ!(まだ『未満』ですが)

■ 『猫mix幻奇譚とらじ/2巻』
猫mix幻奇譚とらじ 2 (フラワーコミックスアルファ)

猫mix幻奇譚とらじ 2 (フラワーコミックスアルファ)

誠実なれどワーカーホリックで、もし作中のような事件がなかったとしても、その経緯から現代ならば熟年離婚されそうなパイ・ヤンが、自分の『ダメ父親』っぷりを認識する旅…とか書いてみたら、ちょっと笑えつつも何だか泣けてきたなぁ。
相互理解を失った不器用な一途さは、紙一重で美徳と怠惰を行き来する。
とらじのいかにも猫的な、おとぼけっぷり溢れる愛らしい大活躍がかわいいのなんの。セオリー通りなら、「とらじの中には記憶を失ったリオの精神が入っているのでは?」と思うのですが、著者氏ならもうひとひねり、ひっくり返してくれそうで期待しております。
作中世界で暗躍するねずみたちの在り様も単純な悪ではなさそうで、その辺の位置付けが明らかにされるであろう今後の展開も楽しみです。

■ 『町でうわさの天狗の子/3巻』
町でうわさの天狗の子 3 (フラワーコミックスアルファ)

町でうわさの天狗の子 3 (フラワーコミックスアルファ)

タケル君との初デートのため努力に努力を重ねて、苦手だが憧れの『ビーチでデート』にやってきた秋姫。けれど楽しい時間のさなか、急なピンチに見舞われあせる秋姫がとっさにつぶやいたのは…「瞬ちゃん…」
何だかんだで瞬ちゃん離れできない(…のを自覚しているのかそうでないのか?)秋姫と、自分の無力さを折々に感じるタケル君の、いい雰囲気ながらもまだまだぎこちない初々しいカップル具合に、ほのぼの&切なさMAX!
そして、ポーカーフェイスでモノローグも記述されないために分かりにくい瞬ちゃんも、その振る舞いや微妙な表情から察するに色々と思う所がありそうで、単純に『カップル成立=ハッピーエンド』にはならないハラハラ&やきもき感が甘酸っぱいですよ。たまらぬ!
そんなメイン筋もおいしいですが、さりげに活躍する脇キャラたちの活躍にも目を奪われる最新刊。クールでシニカルな緑ちゃんの意外に熱い一面や恋。そして可愛さではなく(失礼)、けれどそれ以上に光る個性的が際立つ魅力的なクラスメート達の、フツーにアグレッシブな乙女っぷりにもほのぼのさせて頂きました。
この緩〜い感じが癖になる作品だよな〜。和む。