09/6/22〜23

■ 『BLACK BLOOD BROTHERS/10・11巻』

『ジローは進む。前に。この歩みは、未来の月夜へと続いている。』

目まぐるしく転変する、自他攻守優劣天地。歓喜も絶望も情愛も哀惜も懐古も悔恨も祝福も慟哭も、結ばれ紡がれ織られ、時には断ち切られ、けれどなお積み重ねられた全てが、ただ、この時のために。
信じて愛するもののために命を賭して戦う、敵も、味方も、消えて無くなってしまって良かった者など、どこにもいなかった。それは今此処に在る者も、存在感だけを残して形を失った者も、目映い光を眺める傍らに、同じ強さを焼き付ける影が在るように。
それでもふたつを分かち、明日へと続く夜が明ける。
彼の、彼女の、それぞれの、私たちの、いくつもの『願い』を残して。
それは、兄弟が迎えた旅の終着点。
静謐で、なのに有り余る激情に満ちた情景。悠久と刹那を行き来する吸血鬼と人の、親愛と高き誇りに満ち満ちた、その生き様。
家族であり友人であり恋人であり戦友であり仇敵であり師弟であり仲間であり…いくつもの姿を見せてくれた人と吸血鬼の、そして兄弟の物語が完結。
何よりも先ずとても印象的で、その後も折に触れては思い出していた1巻冒頭の弟視点のモノローグ。それと呼応する、最終巻冒頭の兄視点のモノローグに、「ああ、あれはそういうことだったのか」と…それは予想される幕引きを端的に示すものでありながら、しかし浅薄な予測以上の意味を持っていたのだなぁと深く感じ入りました。
Dクラの時はボロボロ泣きながら読んでしまったのですが、今回は淡々と読了。ただ、胸はより強く、けれど甘い痛みで締め付けられて、そしてとてつもない至福感に満たされながら。
だって、未来は先の先、ずっと先まで続いているのです。
それはおぼろげでも心強い、白くまばゆい月の光に照らされた道の先に。
後書きの『その後』に燃える想像を喚起させられつつ、著者氏が紡ぐ新たな物語を待ち焦がれています。
あー、でもやっぱり短編連作とかで『その後』の情景を見てみたいですなぁ!
素晴らしい『物語』を、本当に、本当に、心の底から、ありがとうございました。