情動の墓穴

『もうずっと昔。長い時間をかけて何度も。
 何度も、何度も、何度も 『がっかり』 しました。
 心の底から死にそうにうんざりしたので、もうそれに期待しないように、
 そのもの、それがもたらしたもの、全部を『覚えておかない』ことにしました。』
『そしてそう決めた通り、時間を重ねてそのように成りました。
 ついでに色々なことを覚えておけなくなりました。』
『だから『代替のないもの』を亡くした時も、もう『がっかり』はしませんでした。
 『そのもの』や『そのこと』の意味や価値を、『よく覚えていない』からです。
 その時そこにあったのは、『もう無い』というだけの、単なる事実でした。』
『あとには形式でしかない自問自答の行為が残され、それすらも忘れられ、
 こうして他者の痛みに喚起された時にだけ、ふとそれが蘇るのみなのです。』
『そしてそのことに、後悔はないのです。』



恐らく自分はそれらに対して、本当は何の感慨も抱いてはいません。
けれどこれから、事の同位かつ異質のものに対して自分が偽るであろう
『何か』を恥じることだけは、忘れずにいようと思いました。
これはそのための記録です。

『でも、それもまた嘘なのです。』
 「じゃー『本当』ってのは何なのよ?」
全部本当と全部嘘ってのは、実は同じじゃないか?
 (そーじゃないだろ)