10/1/11〜1/16
■ 『天にひびき/1巻』
- 作者: やまむらはじめ
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2009/12/28
- メディア: コミック
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ひびきのピアノが奏でる圧倒的な世界に触れた久住は気付く。かつて自分が少年時代に出会い、今もこの胸に余韻を残し続ける演奏をなさしめた、『オーケストラを謳わせた少女』がひびきだったのだと。
…って、このアバウトなあらすじだと、まるでひびきがピアニストのようだな。正解は『指揮者』ですよ(^^;;)
人の曖昧な感情とその機微を、キャラクターの仕草や表情と、むしろ抑えめな言葉をもって表現し、その間隙に生まれる『沈黙』すらをももって雄弁にえがき語ることができる著者氏が挑む新作は、『音』を奏でる若者たちの物語。
目には見えない『音』をマンガとして表現するには、『「音」を受け取る「人」が、いかように影響されているか』という描写しかないわけですが、前述した著者氏の美点を思えば、これこそその手腕が最も効果的に発揮される題材なのではないかなぁと思ったり。
とか適当なごたくはどーでもいー! とにかく序盤から全開で迸るひびきの才気に魅了され、それに心掴まれた久住の渇望と躊躇と逡巡に心惹かれ、その周辺の人々からなる些細な日常のやりとりには密かに胸が高鳴るのです。
『一番最初に出会ったものが、この世で最高のものだった』…ってフレーズ、何だっけなぁ?(高河ゆんの作品だったような?)
そういう存在によって歩む道筋を狂わされるというのは、その至福は、その絶望は、その運命と選択が辿る先にあるのは、どういうものだろう。
久住だけでなく自分もまた、今まさに駆け出そうとしているひびきの背を追いながら、彼女が拓いてくれる物語の先にある風景を、心待ちにしているのです。
■ 『鉄腕バーディー EVOLUTION/3巻』
鉄腕バーディー EVOLUTION 3 (ビッグコミックス)
- 作者: ゆうきまさみ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/11/30
- メディア: コミック
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心機一転と人脈が功を奏し、アグニケミカルの研究所への侵入を達するつとむとバーディーだったが、そこで目の当たりにした残酷な真実に、ふたりの怒りと絶叫がこだまする。
危惧されたふたりの精神融合、そしてその恐れが形を成したかのような暴走。それを見て、「あー、自分は『一心同体』ではなく『二心一体』なバーディーとつとむが好きなのだなぁ」と、今更的に気が付いてみたり。時に自我の境界が混じり合うかのようなシンクロ具合を見せるふたりも好きなのですが、それは『個別』が前提であってこそ燃えるシチュエーションなのですよな。多分。
揺らぐふたりを取り巻く他者の思惑が混沌と渦巻く状況。小夜香に秘められた謎と、彼女の安否。早く続巻が読みたいですなー。
…しかし裏表紙のあらすじ…ソレだけで収録話の大筋を全部語っちゃってるのはどうなのかなぁと(^^;;)<まぁ既読の場合は「アレ、この巻てどこまでの話だっけ?」というのが一目瞭然で便利ではありますが。
■ 『君に届け/10巻』
- 作者: 椎名軽穂
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/01/13
- メディア: コミック
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あーうあー、猛烈な幸福感と達成感! しかしそのあまりにピュアなストロベリっぷりに、読んでいるこちらが赤面してもんどりうつ幸せ地獄! だがソレがたまらなくいい!
恋が実るまでの時間を大事にえがいてきた物語が、その後の時間も大切にえがいて続いている様にまた、胸が熱くなりますよ。
先ずは『恋のライバル』くるみちゃんへの、爽子の『けじめ』。恋の勝者と敗者に別れたふたりは、けれどきっとそれだけで終わってしまわないと思うのです。「爽子ちゃん以外はみんな一緒よ」というくるみの言葉には様々な意味が込められていそうで、続く展開が気になりますよもー!
■ 『ひらめきはつめちゃん/1巻』
- 作者: 大沖
- 出版社/メーカー: マッグガーデン
- 発売日: 2010/01/09
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基本『はるみねーしょん』と同じく、言葉遊びと勘違いのゆる〜い笑いなのですが、おっとり純粋なはつめちゃんと、あまりにフツーのツッコミを入れるお父さんのやりとりがたまらんツボでイイカンジ。いとこのケイちゃんも加えたダブルボケがまた和むちうかね〜。あと、そんなはつめちゃんの着想による、『はこ』のムダな多様性ちうかバリエーションが可愛いの何の。
ビバ! ぼんやりまったりでビックリ…略してBMBな日常!(略す意味ねぇな) 続きも楽しみにお待ちしております。
■ 『くおんの森/2巻』
- 作者: 釣巻和
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2010/01/13
- メディア: コミック
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暖かみのある精緻な絵柄によってえがきだされる作中世界の味わい深さは、何度見ても飽きませんよ。
遊紙の活躍やその背景に迫るエピソードも面白かったのですが、『書痴の楽園』という魅力的な舞台・栞ヶ浜で暮らす同級生や近隣さんなど、周辺の人々の日常が興味深かったです。
そして土地に君臨し、けれどそのくびきから逃れられないとでも言いたげなモリの謎めく言動には更に心惹かれ…あー、実在する土地だったら何としてもこの町に引っ越すのになぁ!
■ 『回游の森』
- 作者: 灰原薬
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2010/01/14
- メディア: 単行本
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いびつなそれは、自分ひとりではなく情を添わせる『誰か』と触れ合い、繋がることでのみ生まれる。君と僕とに別れた『存在』…その耐え難き断絶は悲しく醜悪で、けれどだからこそより、この胸の愛おしさをも募らせるのだ。
↑うーん、寝言ポエム(^^;;)
は、ともかく。短編連作の物語は、そのどれもに昏い奈落が口を開けていて、誰もがそれに捕らわれているのですが、それでも各々の前には未来へと続く梯子がかけられていて、彼らの目はその先を見つめている。
そのことに救いを感じられる自分に気付くことで、自分が抱く『疚しさ』もまた浮き彫りになる…そんな作品でした。