連載分感想(239話)

■ UP時はもう木曜朝なので、今週の239話感想。
■ まさかの乱入から繰り出されたカラカル必殺の一撃を、存外余裕でかわした雹吾(とりあえず臓器損傷はまぬがれたっぽいが、でもフツーにダメージはありそうだよな?)。しかしその雹吾とレオの反撃をいなし、雹吾の利き手小指の第一関節から先を喰い千切ったカラカル。ハイスピードで緊張感溢れるバトルは、久々登場だった『実力者・カラカル』を再印象付ける効果的な見せ場でした。
■ と同時に、その『実力者』からの賞賛によって蘭子の切れ者っぷりもアピールする二重効果。加えて『指の噛み切り→咀嚼』の描写とその感想によって、カラカルの傲慢な強者たるキャラクターを強烈に印象づけた一連の表現。この辺りの基本的な『魅せ方』も、相変わらず安定の達者さだなぁと感心。



■ 一方、ふたりと別行動を取った蘭子が遭遇したのは、カラカルの手下(自称『友人』)であるマーティン。
敵である筈の蘭子の身を案じる発言をし、一見協力的な行動…どころか、ソレを通り越してもはや蘭子の手下(本人的には友達気取りw)となったかのようなマーティンの言動に、果たして裏はあるのかないのか?
この作品の性質&マーティンの過去(うっかり忘れがちだが、連続殺人犯なんですよなコイツ…『友達』ってのも所詮は『殺すことが前提の近親感』だしなぁ)を考えると、まぁ額面通りのモノではなさげな気もしますが。
■ で、そんなマーティンからもたらされた『アイデアル』や『その構成員であるカラカルの暗躍』についての情報ですが、蘭子からすると『聞くまでもなかった』レベルだった模様。
マーティンの語った組織についての情報は、『その程度ならば(作中世界の闇社会では)知られたモノ』であるのかどうか。そして今回の『プレ屋形越え』へのアイデアルの介入を、蘭子は事前予期していたのかどうか。だとするならば、その経緯は?
いや、単に『(その程度の実益のない瑣末な情報は)聞くまでもなかった』という意味だったのかもしれませんが。とか、何にせよこの辺りは以降展開で明かされるのでしょうかね?

■ 読者視点として明らかになった新たな情報は以下の通り
・ アイデアルの語源(ダイヤモンドのカットの最高形)
・ 組織のボスの情報は、末端(マーティンのレベル)にとっては一切が謎
・ タワーに侵入したのは2時間前で、組織の侵入者はカラカルとマーティンだけ
・ 急なことで必要最低限な装備しかできなかった
・ 勝負の内容すら知らず、雹吾の仕掛けたレコーダーで情報を得た
・ それよりカラカルは『利用価値のなくなった鞍馬組を始末する』と判断した
■ ただ、読者視点である以前に蘭子視点から得られたこの情報は、蘭子とマーティンの関係性を鑑みた時に発信元であるマーティン自体の信頼性がイマイチ低いため、虚偽や隠蔽も多分に含まれていそうな気もしたり。
■ まぁソリャソレとして、マーティンの『友達』発言に、心揺るがされたような微妙な表情を見せた蘭子(とその背景効果)を見て、夜行さんのハンカチを見た際の「そうなのかも…」を思い出して爆笑。おおおいwww蘭子おおおwww
でも確かにいなさそうだもんなぁ、友達。ひょっとしたら憧れてたりしたのかなぁ、友達(という存在に)。
いやいや、単に「何言ってんだコイツ?」と呆然としてたのかもしれませんが…でもあの背景がなぁ。
『宙を舞う斑目P(笑)』の時もそうでしたが、通常の作品ならば余韻深げなこの点描背景は、この作品に於いてはもう笑いの記号にしかなっていないよなと。

■ さて、話を戻してその他の重要なポイントとなるのが『ボイスレコーダー』。
[元々は雹吾が勝負の内容を録音するために設置] → [ソレをどこでどうやってかカラカルが入手/勝負内容とその進行状況を把握] → [入手したレコーダーを最上階に仕掛けて新たな情報を入手] → [更にそのレコーダーをトラップに利用]…という流れで使用された模様ですが、「なぜお前がこれを持ってる」 「どこで手に入れた」という雹吾の疑問が、そっくりそのまま読み手の疑問にもなるのですよな。
■ 狭くはない建物内のどこに仕掛けられたのかも分からない(それ以前に『仕掛けられた』こと自体が第三者には分からない)小さなレコーダーの入手。そこに、『この勝負に密接に関わる、カラカル(アイデアル)への協力者』の存在があるように思うのですが…まー順当に考えればやはり捨隈がそうなのかなと?
…と考えると、捨隈が口にしていた『仲間』の実体(鞍馬組との温度差)にも合点がいくような気がしますが、実際がどうなのかの種明かしは、まだもう少し先になりそうですな。

■ そいや『硫化水素』云々とかゆってましたが、蘭子の衣服に付着した程度のアレと、床に撒かれているだけの塩素系洗剤で、何がどう化学変化を起こせるのかというのが微妙に謎なのですが…通過するだけなら混合しないよなと?
■ 『洗剤が撒かれた密閉した室内の床に、蘭子が転がってそのまま動かずにいる』のならば危険かもしれませんが、ビル内とはいえある程度解放された区画を蘭子が通過するのは何の問題もなさそうな気がするのですが?(例えガスが生じても、空気より比重重いしな…)
■ あるいは最初のペッドボトルのような、直接衣服に塩素系洗剤をぶっかける仕掛けをしていたとしても、ソレでどの程度の硫化水素が発生するモノかと…うーん、単なるマーティンのハッタリなのか?

■ 一度は勝負の終わり…ひいてはエピソードの終わりを垣間見せられてクライマックス感を煽られたのも束の間。その傍らで更なる戦端を開いた、この新たなる局面。『戯れの宴』とは、果たして誰が興じるものなのか?
この段に至っても更に深まる物語の底知れ無さには本当に心躍らされますよ。